損か得か。
10年くらい前の話になる。
とても良くしてくれた部長が、新たな職場へ異動することになり、最後の激励会で私にそっと伝えてくれた事がある。
「損してると思う」
その人はとても気さくで話もよく聞いてくれた。仕事では「忖度なしで突き進め」のスタンスで、いつも背中を押してくれるサポート力抜群の上司だった。
当然ながら新たな職場でも、あれよあれよと驚く速さでスピードで昇進を重ねられ、今ではめちゃくちゃ偉くなられている。
私が最も尊敬する上司の1人だ。
当時は心理的安全性などの概念もなく「言うべきことを言う」女性はいなかった。もちろん強めの発言で突き進んで行く男性は存在していて、むしろそれが出来る人だと認知されていた時代だ。キャラもあるがその上司もそのタイプの人だった。
女性だと「損」をするんだ。
そもそも得か損かなどは考えもしていなかったが、時代が変わりつつあるとはいえ、それが現実なんだなとその助言で気づかされた事を今でも覚えている。
その上司は助言と併せて、最後に皆から送られた花束を「ありがとう、頑張って」と私に譲ってくれた。ブーケトスではないが「次は私の番だ」と勝手に解釈してマインドセットした事もよく覚えている。
今では女性も男性もない配慮がかなり進んできたが、現実はまだその時代を生きてきた世代と協働している事を忘れてはいけない。
多様な人材の特徴をしっかり掴んで進む必要があると考えている。
人に助言をするのはとても勇気がいる。
助言に耳を傾けることも勇気がいることかもしれないが、助言をしてくれる人に出会えることはとても貴重で恵まれていることだ。
後輩のためにも、時代に合わせて的確に助言ができる上司になりたいと今は思っている。